木目込み人形と真多呂人形の歴史(2)

素朴な賀茂人形の特徴

賀茂人形

もてはやされる珍しい木目込み手法と、豊かな趣

賀茂人形が作られる以前では、人形と言えば、縫い合わせた着物を着せる、いわゆる「着せ付け人形」か、木彫りに直接彩色を施したものばかりでしたので、この木彫りに筋を入れて衣裳を木目込むという新しい手法による人形は、たいへん珍しがられたようです。

初めのうちは「賀茂人形」あるいは「柳人形」と呼ばれましたが、名人の大八郎が有名になってからは、「大八郎人形」とか「大八人形」といって京都の高級なみやげ物としてもてはやされました。

この人形の特徴的なところは、柳の木の青みがかった地肌をそのまま生かした顔や手足でしょう。
作りたてのうちは木の新鮮さが香りを漂わせていて、時間がたつにつれて木が枯れていくと、また別の風格をましていくといった味わいが、何ともいえない趣を秘めていたのです。

また、鼻筋が高く、あがり口で、下がり目といった顔立ち、しかも満面に笑みをたたえているような穏やかな表情も心和ませるものがありました。
まして、一体一体が手作りであったために、それそれに表情が微妙に違って、それがまた表情豊かな印象を与えるのです。

人形の寸法は小さなものが多く、だいたい5、6cmから10cmくらいのものでしたから、さらに小さな顔に異なった表情を表現する製作技術の優秀さ、細かい気配りには驚かされます。

賀茂人形

当時の姿をとどめる、木ならではの保存の良さ

現在、博物館などに残されている当時の人形は、どれもかなりよい状態のまま保存されています。
これもまた、賀茂人形の特徴です。

これは、人形本体が木でできていますから、形くずれがないということでしょう。
これが、わらなどをボディに使って縫い合わせた衣裳を着せた衣裳人形ですと、年月がたつうちに形が崩れたり、箱に入れられたままだったりして、当時の姿を完全にとどめているものを見つけるのが難しいようです。

こうした特徴が人々の心をとらえ、京都のおみやげとして持ち帰られたり、贈り物として送られたりして、全国各地に広められていきました。

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