木目込み人形『藤娘』

藤娘という人形について、今回はお話しします。

「藤娘」というのはすごくかわいい名前ですよね。

紫の藤の花を持つ女の子で、黒い塗り笠をかぶっています。
塗り笠は江戸時代女性の間で流行したそうです。

この藤娘には、どんな物語があるのでしょうか。

藤娘はもともと「大津絵」という江戸時代に大津(現在:滋賀県大津市)で流行した民芸的な絵のひとつでした。

今でも大津市では、藤娘が交通安全のキャラクターになっていて、大津交通安全協会のホームページへ行ってみると、藤娘がシートベルトをした絵が出てきて面白いですよ。

もともとは、その絵から出てきた娘が踊るという歌舞伎舞踊だったのですが、その後藤の妖精が娘に姿を変えて踊るという内容に変化し、そのスタイルが一般的になったそうです。

妖精が娘に姿を変えるという内容の方が、人気が出たのでしょうか。

現在の歌舞伎舞踊「藤娘」は、藤の絡んだ松の大木の前に藤の精が藤の枝を手にした娘の姿になって現れ、思い通りにならない男心を嘆きつつ踊ります。

やがて遠くからお寺の鐘が鳴り響き夕暮れを告げると、娘も夕暮れとともに姿を消してしまう、というものです。

藤の絡んだ松は、松が男を、藤が女を象徴しています。

藤の花を持って踊る娘は、実は藤の精だったんですね。

藤の花は、豆科で、開花時期は4月20日頃〜5月5日。
紫色の花が幹から先端に向かって咲き進み、そのツルは2mにも達することがあるそうです。
ツルはとても強く、縄として使うこともできるそうです。

残念ながら、もう開花時期は過ぎてしまいましたね。