鯉のぼりの歌(1)

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鯉のぼりの歌というと、「屋根より高い鯉のぼり〜♪」で始まる作詞・近藤宮子氏の『こいのぼり』が思い浮かびますが、本日はもう一つの有名な歌、作曲・弘田龍太郎氏の『鯉のぼり』をご紹介します。

『鯉のぼり』は作者不詳とされてきましたが、後に、弘田龍太郎氏が東京音楽学校在学中に作曲したものと判明したと言われています。

弘田龍太郎氏の代表作としては、「チイチイパッパ チイパッパ♪」で始まる『雀の学校』、「春よ来い 早く来い♪」の『春よこい』等、懐かしい歌が並びます。

この『鯉のぼり』、1番はそらで歌える方も多いでしょうが、3番まで歌える方はそんなにいないのではないでしょうか。
本日は、3番までの歌詞をご紹介しますので、ぜひお子様・お孫様と一緒に歌ってみてくださいね。


鯉のぼり

作詞:不詳/作曲:弘田龍太郎

1番 甍(いらか)の波と雲の波、重なる波の中空(なかぞら)を、
橘(たちばな)香る朝風に、高く泳ぐや、鯉のぼり。
2番 開ける広き其(そ)の口に、舟をも呑まん様見えて、
ゆたかに振(ふる)う尾鰭(おひれ)には、物に動ぜぬ姿あり。
3番 百瀬(ももせ)の滝を登りなば、忽(たちま)ち竜になりぬべき、
わが身に似よや男子(おのこご)と、空に躍るや鯉のぼり。

1番の「甍(いらか)」とは、屋根の瓦(かわら)の事です。
瓦の波と雲の波が重なる合間の空に、橘の香りをのせた朝風が吹く。その風に乗って、鯉のぼりが高く泳ぐ…という、何とも爽やかな情景ですね。

屋根を越えて雄大に広がる空、橘の花が咲き誇る五月の爽やかな朝の空気、風に波打つ鯉のぼりの腹など、五月の景色が脳裏に次々と広がるようです。

2番では、舟をも呑む込むように見える大きな口、豊かに振る尾びれなど、物に動じないような鯉のぼりの堂々たる姿を描写しています。「舟をも呑まん」というスケールの大きな一節が、鯉のぼりのみなぎる力強さを感じさせます。

3番の歌詞は、中国故事の「鯉が大きな滝を登って竜になる」という伝説にちなんだものです。
「百瀬の滝を登り切り、たちまち竜となって天へ駆けのぼる。そんな自分に似なさい、男子よ」と語りかけるかのように、鯉のぼりが元気に空で踊る様は、なんとも勇ましさを感じさせます。

「屋根より高い鯉のぼり〜♪」の歌が、家族の団らんを感じさせる現代的な歌だとすると、こちらの歌は古風で力強く、江戸時代の「尚武」を気風を強く感じさせる歌ではないでしょうか。

鯉のぼりから広がる描写のスケールが実に雄大で、日本語の“詩”としての醍醐味も感じられるこの歌。
今では歌われる事も少なくなった古風な歌ですが、ぜひいつまでも歌い継がれて欲しいものです。

*写真の五月人形は、「引上げ」です。

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